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第6回「学生スポーツとコンプライアンス」講演会

   
正徳 孝夫
立命館スポーツフェロー常任理事
 2013年(平成25年)
9月28日(土)
立命館大学衣笠キャンパス

 私は現在、主にマナーを教える仕事をしております。皆さん、マナーを講習するときは礼儀作法をメインにしますので、最初と最後に挨拶をします。礼をします。その場で立ってください。背筋を伸ばして正しい姿勢をとってください。その位置で礼をします。「よろしくお願いします。」

 学生スポーツとコンプライアンスということですけど、先程いいましたとおり、礼儀作法を中心にお話をします。礼儀作法はすばらしい力を持っているということを今日は皆さんに知っていただきたいということです。私は柔道部のOB・OG会の会長もしておりまして、そういうことも踏まえて私が体験したことをお話したいと思います。

 今日お話するとき、立命館大学で勉強したということは皆さんと共通なのですが、中身を見ますと大きく違うのですね。何が違うか、まず年齢が違う、皆さんは孫に近い年ですね。それから物の考え方が違う。生まれた場所が違う。皆さんとはいろんな違いがある。その私が今日皆さんとコミュニケーションを図るのですね。お話をする、聞いてもらう、立場の違いのある人がいろんな挨拶をするのですね。そのことによって身近に感じるのです。そして人の話を聞いてあげようか、みんなに聞いてもらいたいな、そういう気持ちになるのですね。ですから挨拶というのは非常に大切なのです。今日の私のメインは挨拶です。

 この挨拶は、社会人になった時に挨拶ができるかできないかで人を見られるのです。将来就職活動をされるのですけど、就職活動をする際も挨拶がきちっとできるかどうかが大切なのです。就職活動のためだけに直前に間に合わせのマナーや礼儀作法を勉強する、これはだめです。自分の身についてませんからね。少しずつでもいいですから今から勉強してください。単純な話ですね。朝おはようございます、昼はこんにちは、夜はこんばんは、お休みなさい。こういった挨拶をちゃんとすることによって1日のスタートが気持ちよく切れる、気持ちよく終われるということになりますから、皆さん、挨拶はきちっとしていただきたいと思います。

 人と人が接触する時の共通のルールがマナー、礼儀作法なのです。これはホテルとか旅館などの接客業のためにあるのではないのです。一人一人が出会った時は必ず挨拶がありコミュニケーションが始まります。「挨拶」の「挨」という字は「心を開く」という意味です。「拶」はその心に近づく、心を開いて近づく、「挨拶」というのは心と心が近づく、心を伝えるということになります。あなたのこと好きです、と思っただけでは相手に伝わりませんね。それを言葉と動作で表す、これが定型化してきっちりとされたものが挨拶、礼儀作法ですね。
 挨拶の仕方はお辞儀をします。西洋では握手をしますね。宗教や国よって違ってきますけど、相手を尊重する、思いやる気持ちというのは一緒なんですね。どこの国に行っても人と会えば必ず挨拶があります。そして、お辞儀というのは日本固有の挨拶です。

 日本人でもお辞儀について世界に広めている人がいます。サッカーの長友選手ですね。自分がゴールをしますとお辞儀をするのですね。シャツを脱いで喜んで振り回す選手がいますけど、自分がゴールできたのはチームメートのおかげです、ということでお辞儀をするのです。そうするとチームメートもお辞儀をして応えているのです。いいえどういたしまして。これがヨーロッパの方で広まって、今では女性がにこにこしてお辞儀をしています。長友選手が広めた侍の心、自己主張するよりも相手に敬意を表する。これはすばらしいことですね。皆さんもお辞儀ということに誇りを持って、きっちりとその意義と要領を覚えてください。

 皆さんは体育会でいろんな大会に参加していますが、スポーツマン精神にのっとりルールを守りフェアプレーをする、そういうことでコンプライアンスやマナーについて、一般の学生に比べればレベルは高いと思います。お辞儀もその完成度は高いと思います。しかし、いろんな事件が起こります。なぜ起こるのか。どうして防げるのか。こういうことについてお話をします。

 コンプライアンスの意味、法廷遵守、当たり前の事というのは当たり前のことです。これはアメリカで企業による不正事業がたくさんあったのですが、それを防止するために生まれた言葉で、それをもっと広めて期待に応えるという企業倫理を含めた広い意味なのです。人生を曲がりくねった道を行く車の運転にたとえて見てみましょう。いろんなものを守る法律や規制、規則、条例、マナーといった社会を守る傘、この下で車を上手に運転しなければ崖から落ちますよ。これが人生です。危険がいっぱいあるんです。後輪はスポーツ、勉強・学業が2つの後輪です。スポーツと勉強で前進をします。そして、ハンドルを担う前輪は、感情と知性、このバランスをとってうまくハンドルをとらないといけません。感情の中に欲望があります。感情と欲望、これは決して悪いものではないのです。好きなものこそ上手なれという言葉があるように、皆さんは好きなスポーツをやっています。自分は優勝したい、有名になりたい、オリンピックに出たい、将来こうしたい。人間には欲がありますが、欲はやる気の源ですよね。これは非常に大切なのです。だけど、それを上手く操らないと、いろんな事故が降ってきます。けんか、傷害、暴力。それから詐欺、窃盗、薬物犯、いろんな事件があります。皆さんが通学されている際には交通事故、交通違反のおそれもあります。こういった事故は常に起こりうるのです。なぜ起こるか、その原因をよく見てみますと、自分の感情や欲望が優先する。コミュニケーションがない、思いやりの心がない、当たり前のこと、すなわち、してはいけないことはしない、しなければならないことはしなければならない。この作為、不作為の問題を、判断を誤ると些細な事で大きな事件となります。これをコントロールすることが大事です。こんなことで大丈夫だろうと思っていたら駄目ですね。

 これ(スライド)はコンプライアンスでクラブが大変になったという新聞記事です。近大の野球部員がひったくりをした、3ヶ月の活動停止、監督、部長は辞任。名門の近大が秋季リーグに出られなくなった。これ(スライド)は強豪の天理大学の柔道部で暴行事件があり無期限の活動停止。全日本でも優勝したことがあるような、オリンピック選手を出して金メダルを何人もとった、そのようなクラブが無期限の活動停止で、藤猪柔道部長を解任、大野主将解任、この藤猪という人は、世界選手権で4連覇した人なのですよ。大野主将も、この間の世界選手権で金メダルととったばかり。全日本の強化指定も取り消された。試合に出られない。実は今日、全日本の体重別選手権が東京でやってます。これに大野選手出られないのですね。来月は体重別の団体があります。これも出られないのですね。こういう大変なこいとになるのです。コンプライアンスの重要性、大学への影響もあります。大学関係者が記者会見で誤ってますよね。本人も大変なことになります。家族も心配します。大きく言えば日本のスポーツ界への影響もある。

 そういうことで、立命館大学でも、8月29日から30日にかけて、びわこ草津キャンパスにて「学会シンポジウム」が開かれました。これは日本体育学会というところがあって、体育系大学の学長、学部長が声明文を発表した。これは体罰を含めてのことなんですけど、これは大きな流れがあるということを皆さん知っていただきたい。

 さて、どうすれば防げるのかということで、先程言いましたとおり、理性のコントロールですけど、日ごろから意識をしていないと、自分がその場になって急にしようとしてもコントロールできないですね。従って、してはいいこと、いけないこと、それの判断力を持つということ。判断力の元になるのが思いやりの心ということなんです。これは日常生活の中でマナーを身につけることです。それではマナーについて勉強しましょう。

 マナーというのは、聖徳太子の十七条憲法からスタートしたと言われています。現在では、西洋のキリスト教からきたマナーと日本古来の礼儀作法と一緒になりました。その目的というのは、社会生活の営みがスムーズにいくルールや規範というものです。それが武士道や西洋でいう騎士道というふうになって発展していく。その中で社会生活の知恵として生まれ育っていった。すなわちコンプライアンスの原型なのです。日本の武士道や茶道や華道や着物の着付けとかに分かれていくのです。○○流とかありますが、小笠原流の小笠原というのは昔の武将です。侍なんです。そして、ホテルや旅館ではそれを使って接客をするようになって、その極めつけが「おもてなしの心」。おもてなしの心というと、この間のオリンピック招致の時に、プレゼンテーションをしていた滝川クリステルさんが「お・も・て・な・し」と言っていましてね。このおもてなしの心は日本文化なんです。スポーツをする皆さんもこれは非常に大事なんですね。これは頭に入れていただきたい。

 マナーはたくさんありますから、今日は皆さんには挨拶の勉強をしてもらいますけど、皆さんには一つ一つマナーの勉強をして、就職活動の時には、きっちりと面接試験を受けられるようになってほしいと思います。マナーを学んでいきますと人間関係がよくなります。トラブルが少なくなりますね。そして、勉強もよくできるようになる。マナーを身につけると思いやりの気持ちが強くなり、人間関係がよくなる。そして、学生全般にトラブルが少なくなる。そして、勉強にも成果が出ます。コンプライアンスも守れる。充実した生活という魔法のようなシステムになる。

 それでは基本的なマナーの中で、お辞儀、挨拶、これだけを時間をもらって皆さんにやっていただきたいと思います。礼には3つあります。会釈、敬礼、最敬礼。そのうちの3つをこれから皆さんに実践してもらいたいと思います。それではその場に立ってください。まず、基本の姿勢。美しい立ち姿、背筋を伸ばして立ちます。視線は真っ直ぐ前を見てください。あごを引きます。肩の力を抜いて両腕はゆったりと下に伸ばしてください。やや胸を広めるような気持ちで肩胛骨を合わせるようにしてください。へその下3センチの丹田に力を入れます。それが基本の姿勢です。最初の会釈。角度は15度です。リズムは3です1・2・3で礼をして1・2・3で上がってください。「おはようございます」でいきます。やってみましょう・・・・。次ぎに敬礼。これは30度。「ありがとうございます」でいきます。リズムは5です。やってみましょう・・・・。

 挨拶とお辞儀といいましても、非常に奥が深いですよね。ですから皆さん、これからいろんな場面で挨拶やお辞儀をするということがあると思いますが、授業、先輩と会った時、友達と会った時、いろんなところで挨拶を上手にして、将来、就職をして社会人になった時も、認められるようにしてください。

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