第5回「学生スポーツとコンプライアンス」
講演会・討論会・懇親会 開催


〜学生により近づき、そして共に考え、行動する〜

  9月29日(土)、立命館大学衣笠キャンパスにて、立命館スポーツフェロー主催の第5回「学生スポーツとコンプライアンス」が、体育会現役学生・立命館スポーツフェロー関係者、大学関係者等を集め開催されました。  

講演会                (敬称略)
 司   会  高橋    誠  立命館スポーツフェロー事業委員長
 開会挨拶  林    國松  立命館スポーツフェロー副会長
 挨   拶  野田  千裕  立命館大学体育会本部副委員長
 講   師  國廣  敏文  学校法人立命館常務理事
                   立命館大学スポーツ強化センター長
         森田  恒雄  立命館スポーツフェロー副会長
         正徳  孝夫  立命館スポーツフェロー常任幹事
 

開会挨拶
林  國松
 ルール、モラル、マナー すなわち道徳、礼儀。決められたことを遵守する。スポーツをするということは、このことが自然に身について、すばらしい人間形成ができると確信しています。また、大学の4年間というのは、未成年で入学し、立派な大人の青年となって社会の担い手として卒業するのです。大学の4年間は、修行の場です。失敗し泣き笑い友情を育む。何事にも一生懸命取り組み、目的を持って未来に向かって頑張ってほしいと思います。この講演を機に、1つでも2つでも自分の身になるよう学んでください。
  開会するに際し、多数の方々のご協力とご尽力に感謝いたします。

挨拶
 
野田 千裕

 立命館大学体育会では、不祥事を起こした部活は、活動停止や学友会費の減額などの処罰を受けています。他の大学を見ましても、不祥事が非常に多く起きていて実際に廃部になってしまった部活もあります。先輩が後輩を指導しようとして暴力を振るってしまい、不祥事になったということもあります。後輩に対する行き過ぎた指導を行ったというのが問題だと思います。
 体育会の学生として、ルールを学んだ上活動を行っていく必要があるので、この「学生スポーツとコンプライアンス」というのは、皆さんの学びの場になると思います。1回生からコンプライアンスについて理解をして活動をし、部活と体育会全体をよりよくしてほしいと思います。 体育会本部では、一生懸命皆さんの活動の支援をしていますので、皆さんも体育会本部、立命館大学体育会、そして立命館大学にご協力をよろしくお願いします。
 
   

講演内容
國廣 敏文

T 課外自主活動としての学生スポーツの意義
  立命館大学では、広い意味での学びの一環として課外自主活動を重視しています。文武両道とは言うのは簡単ですけどなかなか難しい。しかし、課外活動をやる中で集団の中での自分の身の置き方や、リーダーとしての力を身につけるというような、「総合的な人間力」を皆さんに身につけて社会に出てもらいたい。また、チームの中でお互いに意志を一緒にすることの大切さなどを身についてほしい。最近、世の中では社会人基礎力ということが言われます。社会人としてやっていく力が身に付いていない若い子が多いということですが、そういう力は皆さんがやっている課外活動やスポーツの中で付けられると信じていますので、大学としてもそういう方針で考えているということを理解してほしい。 

U 立命館大学とスポーツ政策
  約30年位前から大学としてスポーツを強化し普及してきました。スポーツ振興会議を置いて、スポーツを大学の学びの一つの大きな柱にしようとしてきました。現在は、キャンパス創造ということで、多くのスポーツ施設を作る計画をしています。皆さんの今後の活動の場が広がる可能性が高く頑張ってほしい。
 現在、体育会の学生は、6月現在で2,175人いると聞いています。立命館大学の学生が約3万6,000人いますので、全体から見れば多くないのです。体育会の一員であるということは、普通の学生とは違うという自覚を持っていると思います。大学としても政策を作って総合的な人間力を付けてもらって、「さすが立命館の学生」、「さすが立命館の体育会にいた学生」と言ってもらえるように応援し、立命館カレッジスポーツのモデルを作りたい。

V 立命館大学と「コンプライアンス」
  しかしながら、たくさんの不祥事が発生しており、なぜこんな事をしたのだろうということより、どこに問題があるのかということを考えなければいけない。そういう中で、コンプライアンスという話が出てくる。
 コンプライアンスとは、辞書をひきますと、命令・要求に従うということ。法令遵守というふうになっています。法治国家ですから法律を守るのは当たり前のことで、法律には書いていない社会的な倫理やモラルやマナーということを含めてコンプライアンスという言葉が使われています。部活で違反があれば、活動停止になる、対外試合禁止になる、クラブの監督やコーチや部長や副部長が責任をとって辞任するとか、あるいは部員が退部するとか、また、本学でも廃部になったクラブがいくつかあります。皆さんのクラブがそうならないとは限らない。刑事や民事や法律上の責任ではなくて、社会的な責任を問われるし負わなければならないということを自覚してほしいのです。
 さて、コンプライアンス違反が起きやすい会社の体質を大学のクラブに置き換えた場合、勝つためには手段を選ばない勝利至上主義。それから秘密主義。事件事故を起こしても隠そうとして嘘をつく体質。何でも問題があったら、すぐに連絡をとって相談をして行動することが大事です。組織全体だけでなくて、会社でいうと幹部、経営者の無理解だとか、一面的な物の見方、リーダーシップの欠如が組織をだめにしてしまう。それから不祥事を起こした者に対する処分が甘いということもありますが、クラブに中でも下級生には厳しいが上級生にはそうではないようなクラブはだめになる。上級生は下級生の模範とならなければならないということです。
 コンプライアンス違反を防ぐにはどうしたらいいかというと、第一階層目では、国家や法律に従うこと、第二階層目では自分が所属している組織、団体のルール、あるいは連盟などのルールに従う。第三階層目では社会のルールというようなものを守る。コンプライアンスというのは、難しいことではなく、当たり前のことなんです。当たり前のことができなかったり破ってしまうとルール違反になる。
 企業の場合、コンプライアンス違反を起こすと社会的に批判を浴びて、その批判をなくすのにものすごく時間がかかる。学生スポーツに置き換えると、学生スポーツ団体としてできること、やるべきこととは、「CSSR」という「College Sports Social Responsibility」、これは私が作った言葉です。要するに大学の社会的説明責任ですが、大切なのは具体的対策ということです。自分たちがクラブ活動をする上での行動基準をはっきりさせる。問題がないかチェックする人を置く。それからお互いにコミュニケーションがうまくいっているのかとか、体育会員として不的確でないかというようなことを話し合うということが大事です。 そういう雰囲気や文化をつくっていく。そしてチームの中で問題が解決しない時は、監督やコーチや部長などに話したりして 少し手助けをしてもらうという意識を持って、大学の社会的責任を果たせるようにしてほしいと思います。
 
おわりに−立命館スポーツを担う人間としての自覚と誇りを持て!−
  最後に、体育会の一員としての自覚と誇りと責任を持もてということですけど、歴史からも人からも学んでほしい。
 私が最近読んだ本の中で、一つは柴五郎さんという幕末の会津出身の人の話を、石光真人という人がまとめているのですけど、「正確で冷静な判断は、私心なき心=誠から生まれる」というような言い方をしています。
 また、西郷隆盛の言葉をわかりやすく書き留めたのが、「話し言葉で読める「西郷南洲遺訓」」。本当のリーダーになるためには、私利私欲を捨てて明確なビジョンを持って、そのビジョンのためには一歩も引かないという心構えが大事だということが書いてあります。人が身につけなければならない道というのは、天地自然の道だというのです。それを知るためには「敬天愛人」、天(正しい道)を敬い人を愛せということなんです。私利私欲をなくし人の言うことに耳を貸して己を乗り越える。今日お話しているようなことに通じるのではないかということです。
 よくスポーツの世界では「心技体」といいます。この中で一番大切なのは心です。何のためにそれをやるか、あるいは間違ったことをやらないという心が大事なんですけど、私は「心技体」には一つ足らない。「知」が足らない、ということで、「心技体知」と言っています。心と体、技術と知識。人間はその真ん中に位置するのが理想。そこを目指してほしい。技術と体はあるのだけれど、気持ちが入っていないなということであれば、気持ちや知識を磨くということです。
 最後に、立命館憲章。学園運営の原則として、「自主・民主・公正・公開・非暴力」ということが書いてあります。立命館は暴力やいじめをする者には非常に厳しい態度をとっています。皆さんには一生涯立命館とともに歩んでほしいということで、「生涯立命」ということを言って、私の講演にかえさせていただきたいと思います。

森田 恒雄

 皆さんは文武両道の立命館大学を選ばれました。立命館は体育会での戦績が良いからと言って、卒業には何の関係のない大学なんです。そのような大学に入学してきたということは、皆さんは非常に志の高い諸君ばかりなのです。ですけど問題を起こしてクラブが活動停止や廃部になるなどの不幸がないように、OB・OGが話をしようじゃないかと、この「学生スポーツとコンプライアンス」は第5回目の開催となりました。
 こういう講演をしておりましても、なおかつ不祥事が起こっている。あるNPO法人の発表では、ここ30年でアルコールや薬物で死んだ学生が139人いるのですが、ほとんどが一気飲みなんです。今年だけでも5人いるそうです。新入生歓迎コンパなどでお酒を飲まされるということがあるんではないでしょうか。まだ新入生なのでアルコールは法律では禁じられているのですが、ここに体育会系の甘さというものがあったりして、「オレの酒が飲めないのか」「先輩の酒が飲めないのか」とか言われて口にする。
 1回そういう問題が起きて、マスコミに取り上げられると、それを回復するには計り知れない努力が必要なのです。スポーツで優秀な成績を収めたからといって、許してもらえる社会ではないということを覚えておいてほしい。
 不祥事を起こさないためにいろんな活動をするのだけれどなくならない。私は人権感覚というところから取り組んでゆきたいと思うのです。人権感覚というものが最近甘くなってきています。からかいの文化と言って、おもしろおかしく言って笑いを取る。今テレビをつけたらどのチャンネルを回しても、お笑い芸人が出てきてからかいによって笑いをとるというようなものが多い。人権感覚というのは犯罪行為とかではなく、もっと崇高的なものと思います。自分自身の心の問題として生きて行かなければならない。絆であるとか、つながりであるとか、「3・11」からよくそういう言葉を聞きます。
 体育会では、「うちのクラブの伝統はこうなんだ」などどよく言う。しかし、伝統とはいい物を残すのだけれど、改めなければならないものを改めるのが伝統なのです。「うちのクラブの伝統は一気飲みしなければならない」とか、もしもそういうものが伝統であるとしたら、それは伝統ではなく伝承なのです。伝統と伝承は違います。変えなければならないものは、勇気を持って変えるのです。先輩がやっていることに「違います」なんてことは、なかなか言えないことですが、皆さんが先輩になった時、おかしいと思うことは改めていかなければならないのです。それだけのものを持って部を守っていってほしいと思います。 
 それと、形式的な平等と実質的な平等というものが最近薄くなっています。たとえば、3つのパンを3人にどのように分けたらよいかという時、1つづつ分けるというのが多くの考え方なのです。これが形式的な平等なんです。形だけ結果だけを整えようというものです。実質的な平等とは、その3人の条件がそれぞれ違うと思います。なかなかパンが買えない人もいるかもしれない。裕福でパンだけでなく毎日ごちそうという人もいると思います。その条件の違いの中でパンを分けるならば、パンがもらえない人がいてもいいのです。反対に貧困でパンも買えないという人に3つあげてもいいのです。これが実質的な平等なんです。そういうものが部活動の中でないのだろうかと思う。運動能力には個人差がある。強い者もいれば弱い者もいる。同じような練習をしていて、ついて行けなくて振り落とされていくこともあるのじゃないか。勝利至上主義になったら、弱い者の相手なんかしてられない。それがいじめになったり、しごきになっていくということがあるのだということは、肝に銘じなければならないことだと思うのです。強い者は自分たちだけで強くなっているのではないのです。一人ではできないということを覚えておかねればなりません。これらが原因となって大きな事件事故の巻き込まれているのではないでしょうか。
 それと日常の会話、体育会ですから「こうしなさい」や、「そんなことでは強くならない」とか、厳しい言葉をかけられたりすることもあるのですね。だけどもそれが練習ではなく私生活に戻った時に同じようなことを言われたりすると嫌になりますね。日常の会話が命令調になると、これも犯罪とかコンプライアンス違反につながっていくような場合もあるのです。日常から強い人権感覚を持たなければ、ついついそういう言葉で接してしまい、人間関係がおかしくなってしまうのです。
 それと見てきたような嘘をつく。実際自分が見てきて、確認もしていないようなことを大きくとらえて物事を言うということがあるでしょう。この嘘というのが不祥事につながっていく原因なのです。正しいことしか伝えない、知っていることしか伝えないことが相互にあれば信頼もできるのです。
 さらに自分が実践してきたような嘘をつく。実践してきた者ほどそういうことを言わない。本当に苦しい辛い稽古をして練習をして汗を流してきた者は昔話や自慢話をしない。こういうことは十分気をつけてほしいと思います。
 それから一部を見て全体を指す。一部とは、たとえば立命館の学生が何か不祥事を起こしたならば、個人ではなく、一人がしたことを立命館全体がそうしたようにと考えられる。我々は言葉で生活をしていますけど、言葉が本当に正確に伝わっているかというと、伝わっていない。ある個人が言ったことをみんなが言っているようなことをよく言うでしょう。
 それと、好きと愛とは違うと言うことを昨年も話をしたのですが、皆さんは、その部活動を立命館でしたいということで来たのです。「好き」ではだめなんです。「好き」の反対は嫌いなのです。一部でも好きは好きなのです。だからそれ以外は嫌いなのです。反対のことがあれば嫌いになるというおそれがあるのです。ところが、愛というのはひっくるめて嫌なことでも接することができるのです。愛というものがあれば、そこに踏みとどまることが出来るのです。
 今、全国的にいじめが問題となっているが、私が個人的に思っているのは、いじめられている子を一生懸命指導しても心が動かない。いじめる方にもっともっと指導しなければいじめはなくならないと思います。皆さんの部活動の中でも、後輩に対するいじめやしごきが起こっているかもしれませんが、人権感覚をいうことが薄くなってきていることで、コンプライアンス違反が起こっているのではないかと思います。だから常に、人権感覚を持たなければ、なかなか不祥事はなくなっていかないのではないでしょうか。せっかく立命館に入学したのですから、皆さんは夢と希望というものを、ここで蓄積できるうように、是非頑張ってほしいと思います。
 問題や事件、事故を起こすということは、日頃の人権感覚が大きく左右するのだ、法に触れないとか、犯罪行為でないからいいんだではなくて、人権感覚が大切なんだ。人権や道徳というものは、法律よりも憲法よりも、もっと崇高なものなんだということを伝えていってほしいなと思います。
 

正徳 孝夫


私は、立命館大学を卒業後、京都府警察の警察官を拝命し、山科警察署長で退職後、現在マナーを教える仕事をしています。警察官時代の体験と皆さんのOBであるという事実と、そして今日はマナーの勉強をしているということで、それを併せてお話をしていきたいと思います。
 コンプライアンスとは、人生の中でどんなことなのかというと、「社会の傘」といいまして、憲法から各種法令、規則、しきたり、最後にはエチケットやマナー、そういったものが社会全体を囲んで守ってくれている。みなさん一人一人が社会生活を送るのについて、過不足がないように問題がないようにです。
 しかし、この中で一人一人の人生というのは、真っ直ぐな道ではありません。一歩でも間違うと崖下に落ちます。下手をすれば怪我をしたり死んでしまうかもしれません。しかし、皆さんは歩んでいかなければならない。しかも、いろんな事件事故、災いが待ち受けています。それは最初からそこにあることがわかっているものではないのです。安全だと思って運転をしていたら、知らない間に横からわき出てくるので気をつけて人生を歩んでほしい。そのためにはコンプライアンスとうものの考え方が大切なのです。
 車の運転を人生にたとえると、左後輪は皆さんの体育会活動、右後輪は、学部の勉強です。この2つは学生の両輪です。立命館は文武両道ということですから、これで全力で走ってもらいたい。ただ、こういう曲がりくねった道を安全で行こうとすれば、前輪をうまく運転しなければならない。右前輪は感情ですね。これは先程も話が出ていました、好きとか嫌いとか、こういうものですね。自分のスポーツが好きだからやっているという人がいるでしょう。得意だからという人もあるでしょう。好きなことは一生懸命できるのです。だけど感情というものがあまりにも強すぎると運転を誤ります。それから左の前輪、こういった感情をコントロールするのは知識なんですね。それも法律的な知識、それを全体的に言えばコンプライアンスになりますけど、感情をコントロールして安全に運転してくれる。それを運転するドライバーは、皆さん一人一人なのです。人はいろんな情報を集めて自分の判断で運転しているのですけど、肝に命じてほしいのが心なのです。人を思いやる気持ち、これは森田副会長の講演にもありましたが、愛なのですね、相手のことを思いやる、それがないと同じことでも判断を誤ります。先輩は後輩を思いやり、後輩は先輩を思いやる。そういう思いがあればしごきなんかにはならないのですよね。思いやりの気持ちを持つか持たないか、一番大切なところなのです。
 それから小樽商大での一気飲みでの死亡事故。大学当局は日頃からよく指導をしていたのですね。しかしそれが学生に伝わっていない。事故防止について大学が指示指導したことが、皆さんにどれだけ残っているのかが大切なのです。先輩、部長、監督、コーチ、そして教授の言うことはしっかり聞いて、その中のポイントは、どうしたらいいのかということはしっかり心に留めて自分のものにしてください。それとスピード違反とか交通事故などには十分気をつけてほしい。自転車で歩道をものすごいスピードで走っている人もいますが、なくしてほしいと思います。
 コンプライアンス違反があった場合どうするのか。事故が発生したという時は、「ほう・れん・そう」、報告、連絡、相談ですね。早めに報告して一番よい方法をとってもらうようにして下さい。ただ、普段人間関係をよくしていなければ、相談する相手もいないし、相談しても親身に受け取ってくれません。ですから人間関係を日頃から大事にしてください。
 コンプライアンス違反者にならないには、どうしたらよいか。単純に言うと、してはいけないことはしない。するべきことはする。この常識をしっかり守ることなのですよね。そして、その判断力に基づく自分の行動、これは、皆さんの日常生活の中でマナーを身につけていくことです。まず、どのマナーを選ぶかということで判断力ができます。そして判断をし行動していくわけで、その時に人と人とのコミュニケーションがあります。そして、人間関係をよくしてゆきます。
 マナー歴史の話をしますと、日本では礼儀作法と言われていますが、その歴史は聖徳太子の時代がルーツと言われています。しかし、日本では神話に出てくるように、昔から神様を祀っていまして、これは山とか岩とか身近なものを神様として祀ってきた。ですから神様に対するものとしてあったのですね。それから、聖徳太子が佛教の教えを入れて書面を表す。十七条憲法とか階位十二階などに表して、それがルーツとされています。それが江戸時代で武家の社会に発展して、現在の礼儀作法として持ち込まれたと思います。
 ところで、エチケットやマナーは西洋の話ですよね。この西洋のエチケットやマナーというのはキリスト教からなのです。レディーファーストという言葉を聞いたことがあると思いますが、これはキリスト教の十字軍の遠征というのが11世紀から13世紀にかけて行われましたが、この遠征軍がいろんな国で悪いことをしないように、弱き者は助けなさい、貴婦人には丁寧に扱いなさい、という教えが厳しく達せられた、それがレディーファーストになったのですね。
 日本の神道、それから佛教、キリスト教も含めたすべての基礎がそこから教えられた。
世の中の人が平穏に暮らすために、どうすればよいかということが集約された生活の糧、生活の知恵がマナーだと思ってください。

 マナーの実践ということで、女性の講師を連れて来ていますので、皆さんと一緒に勉強してもらいたいと思います。
 
  頭川 展子
 私は現在、伝統和文化マナーマイスター協会京都支部のマナー講師をさせていただいております。短大を卒業後、京都の地方銀行に就職し、全日本きもの女王、ミス日本関西代表に選んでいただきまして、京都観光おもてなし大使に任命していただきました。そうした中で、海外の人を含めまして、いろんな人と会い、自分も恥をかかず相手にも不快な思いをさせたくないという思いがあり、自分に自信をつけるためにもマナーについて勉強し、現在はマナー講師をさせていただいております。今日はすばらしい講演会に参加させていただいてうれしく思います。 
 
 早速ですけど、基本の姿勢、彼女の姿勢を見ながらやっていきたいと思います。後で皆さんにもやっていただきます。
 基本の姿勢、まず首筋をしっかり伸ばします。そして目は前方を見ます。肩はやや胸を広げ気味にして肩の力を抜いて腕は自然に垂れます。丹田というおへその3センチほど下に力を入れますと、腰とかお尻の周りが引き締まります。足はかかとをつけて、女性はやや足先を広げます。男性は拳1個くらい広げます。角度は60度くらい。これが基本の姿勢ですね。これがすべての動作の基本になります。
 次ぎにお辞儀です。日本人の挨拶はお辞儀をしますね。お辞儀でも正式なお辞儀は三種類あります。1つは会釈、これは一番軽いお辞儀で角度は15度、リズムは1、2、3で下げて1、2、3で上げる。その次は普通のお辞儀、角度は30度。リズムは1、2、3、4、5。それから最敬礼というのがありまして、45度でリズムは7です。
 では、皆さんも一緒にやってみましょう・・・・。

 最後に、マナーを修得すると思いやりができます。そうすると、コミュニケーションがよくなる、トラブルが少なくなる。そして明るくて楽しい社会が生まれる。コンプライアンス違反が起こらなくなります。男性は格好良く、女性は美しくなり、魅力的な人間になる。そして人生が充実してきます。
 皆さん、これからも立命館の学生としてミスのないように人生を歩んでいただいて、前途洋々たる世界を切り開いていくようにお願いします。

討論会                (敬称略)
 コーディネーター   村岡    治  立命館スポーツフェロー会長
 パネリスト    國廣  敏文  (講師)
           森田  恒雄  (講師)
           正徳  孝夫  (講師)
           施    華光  立命館大学体育会 軟式野球部 3回生
           市川  兆治   立命館大学体育会 ゴルフ部 2回生











パネリストから

國廣 敏文
 西郷隆盛の話をしましたが、彼は「国の柱になるには3つの仕事がある」と言っています。学問と武道と産業だと言っているのです。それを大学生に置き換えると、我々が「文武」といっている学問とスポーツ、課外活動です。3つ目の産業は、社会経験だとか社会実践だと思う。皆さんはまだ学生だから許されると思っているところがあるのですが、しかし、もう社会人の一員になりつつあるので、社会人としての身だしなみというか、マナーを身につけていかないと社会の中で認められない、尊敬されないと思いますので、その点を学んでほしいと思います。

森田 恒雄
 日本のサッカーの成績というのは非常にいい方向に進んでいるのですが、「言語技術が日本のサッカーを変える」というような本を読みました。今までは根性、精神論、練習練習で来たのですが、それだけでは世界で闘えない。なぜここでシュートしなければならないか。どうしてここにパスしなければならないかということを、言語で頭の中でそういうことが分かっていないとできないというのです。それで練習ではなく言語の技術を向上させるため文書を書かしたり、人前でしゃべったりといくことを反復練習させることによって、だんだん技術も成績も向上してきた。司馬遼太郎の「何事かを成し遂げるのは、その人の才能ではなく性格である。」という言葉があります。皆さんは才能を持っていると思いますが、それを生かすか死なすかというのは性格なのです。

正徳 孝夫
 皆さん、携帯電話をお持ちの方がほとんどと思いますが、マナーモードにもいろいろありまして、それと同じようにマナーでも時と場所で使い分けをしていけば、わかりやすくなじみやすいと思います。それから、なぜマナーが必要なのかというと、些細なことが原因で重大な事件が起こることがありますが、人間としての相手を思いやる心とかコミュニケーションとかが、少なくなってきたのだと思います。インターネット、メールなど、いろんな便利なものができて、それがかえって、コミュニケーションを弱くしている。だから、マナーとか礼儀作法が大事だと思います。

 

施 華光
 立命館大学体育会では、ほとんどのクラブが学生の自主性に任せられています。コンプライアンスというのは、明文の規定がなくて、皆さんの自覚と責任ということが重要になってくると思います。國廣先生のお話の中で、歴史から学ぶ、人から学ぶということがありました。体育会に所属にしていて、後輩と先輩との上下関係などは良い伝統だと思います。皆さんは、何が伝統なのか否かを判断していく必要があると思いました。最後に、「生涯立命」という言葉がありましたが、ほとんどの学生が、この立命館大学が最終学歴になると思います。一生立命館の名前を背負って人生生きていくのですが、卒業してからも胸をはって、「私は立命館大学の○○部の出身です。」と言えるようになってほしいと思います。愛される立命館大学体育会となるよう頑張りましょう。

市川 兆治
 
社会基礎力を通して、学生スポーツをやっているのは立命館なのですけど、マナーというのは大事で、そのマナーというのは自分自身では気づかず、人から言われて気づくことが多い。そのためにも自覚することでチームと向き合って、チームの中で報告、連絡、相談をして、上級生が下級生を、学園という物を背負って行動してほしいと思いました。下級生も上級生の姿を見て、立命館に誇りを持っていけるようにしてほしいと思います。

終わりに

村岡 治
 私も教員をして会社経営をしてきたのですが、出世する人物は本当にできます。すごいです。来年もまたやりますから、続きを聞きたい人は来年も来てください。

懇親会
                (敬称略)
 司   会  岸本    拓  立命館大学体育会 硬式野球部 4回生
 乾   杯  片田  賢史  立命館大学学生部スポーツ強化センター課長
 閉会挨拶  永井    博  立命館スポーツフェロー総務委員長
   

乾杯挨拶
片田 賢史


 今日は、立命館スポーツフェローの皆様に、このような会をもっていただきまして本当にありがとうございます。スポーツフェローは体育会学生の皆さんが卒業して入る体育会OB会のことなので、今日のお話をうけて卒業したらスポーツフェローの活動に参加していただきたいと思います。
 皆さんには、なぜマナーを守りコミュニケーションをとって人を愛することが大事なのかと、今日の話を1つ1つ思い出して、その中できちっと目標(アスリートとしての目標、文武両道・立命館としての目標)を定めて、それを背負って最大の成果をあげるため頑張ってほしいと思います。
       

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