第3回「学生スポーツとコンプライアンス」
講演会・討論会・懇親会 開催


〜学生により近づき、そして共に考え、行動する〜

  9月18日(土)、立命館大学衣笠キャンパスにて、立命館スポーツフェロー主催の第3回「学生スポーツとコンプライアンス」が、体育会現役学生・立命館スポーツフェロー関係者、大学関係者等約400人を集め開催されました。  

講演会                (敬称略)
 司   会  高橋    誠  立命館スポーツフェロー事業委員長
 開会挨拶  林    國松  立命館スポーツフェロー副会長
 講   師  國廣  敏文  学校法人立命館常務理事
                   立命館大学スポーツ強化センター長
         内田  憲幸  元京都府警察官 警察庁警視長
                   京都簡易裁判所司法委員
         森田  恒雄  立命館スポーツフェロー副会長 

開会挨拶
林  國松
 相変わらず大小様々な不祥事が後を絶たない。一人の不祥事が全体の問題となり、個人の将来の汚点となる。どんな小さいことでも相談してほしい。経験豊かなOB、OGがたくさんいます。一緒に悩み、解決に向けて努力しようではないか。若者をとりまく社会情勢は決して甘いものではないが、スポーツで培った強い精神で何事も克服しようではないか。この講演会を機会に、ルールの大切さを学んで欲しい。

講演内容
國廣 敏文
 「コンプライアンス」とは、もともとは法令遵守という意味で使われていたが、バブル崩壊後、様々な企業の不祥事、法令違反が発生し、コンプライアンスということがかなり言われるようになった。不祥事が起きると信用を失い、クラブのイメージ、伝統が揺るがされてゆき、場合によっては廃部になることもありえる。単に法律を守ればよいということではなく、広い意味で社会のルールを守ることがコンプライアンスと言われている。
 皆さんは、体育会活動という課外活動をやっているが、立命館では課外活動を学びと成長の一環として捉えている。立命館は、スポーツ選抜入試や一芸入試、AO入試など、多彩な学生を受け入れている。しかしすべてについて学力基準を課している。それは勉強だけでは人間として社会人として成長するには十分な力がつかない。やはりクラブやサークルや留学やアルバイトなどの課外で人間力がつく。自分が所属する団体、集団の目的と価値観を共有し、そういう中で自己を磨き、社会人としての力をつける。社会人に向けスポーツが役立っていると考え、立命館ではスポーツ、課外活動を正課と同じように位置づけて政策的に支援し続けている。「立命館型カレッジスポーツモデル」を目指して活動をしており、その中で、皆さんも活動しているということを理解してもらいたい。
 しかし、残念なことに法律に抵触することにとどまらず、学内でのルール違反が多数おきており、情けないことに体育会のクラブの中でも起きている。正課と課外の中で総合的な人間力をつけてほしいと思う中で、一部にコンプライアンス違反の問題が起きている。 学生スポーツは、その「本物」の汗や涙、技の切れ味や力強さ、一生懸命さが見る人々を勇気付け感動させている。一緒に戦っているような気にさせる。皆さんは期待され尊敬されている。その反面、自分が応援しているクラブやスポーツで問題が起きると、「愛情の裏返し」というか、激しい怒りや批判になる。
 体育会の一員としてやるべきことは、法律を守るということは当然で、クラブ活動以前の問題であるが、これが守れないことが後を絶たないことを再認識して、クラブの一員として、「安全・安心」のクラブづくり、クラブ活動をやってほしい。何よりも問題が起きないことが大切であるが、事件、事故、不祥事が起きた時は迅速な報告、相談をして判断を仰いで対応する。クラブで問題が起きたらクラブの幹部が集まって、そしてコーチや監督、スポーツ強化オフィスに報告をする。報告をせずに後で大きな問題になることがある。判断がつかない場合、あるいは判断がついても、どういう処理をしたのか必ず報告をする。クラブの存続のために、今後のために大切なことである。
 そして対策は何か。クラブでコンプライアンスを考えながら行動をする基準を作ったり、統括の担当者を置いてみたり、あるいは部員全員で考えてみる。そしてチェックしてコンプライアンスを遵守するクラブの文化を守っていく。そして最も大切なことは、一人一人がそういう意識を持つこと、行動すること。そして自分たちを取り巻く「ステークホルダー(学生、父母、教職員、校友、地域、スポーツファン、立命ファンなど)」の立場になって行動してほしい。皆さん一人一人が立命館のスポーツの代表になっているという自覚と責任を持ち、立命館スポーツに喜びと誇りをもって行動してほしい。
 最後に、皆さんは今後クラブを背負って立つ存在であるが、皆さんには、マックス・ウェーバーが言う政治家に不可欠な3つの要素、「情熱、責任感、判断力」が必要であり持ってほしい。もう一つは、皆さんは生涯立命館と共に歩む。立命館に入れば一生立命館を背負う。それを誇りとするかマイナスのものとするかは、皆さんの自覚にかかっている。立命館の一員として行動してほしい。

内田 憲幸

 警察官を40年やってきましたが、長く機動隊で勤務しました。機動隊は警察で一番力の強い部署であり、そこには全国大会、オリンピック等に出場するような柔道、剣道の選手も集まっています。私は機動隊の隊長も経験しましたが、柔道、剣道等でどうしたら強くなるか、体も心も強く正しくなるためにはどうしたらいいかということで悩みました。それは練習あるのみですけど、闇雲に練習時間を多くするということではなく、研究、工夫、先輩の技を盗むことも必要でした。皆さんには是非強くなってほしい。それは練習、そして研究、工夫なのです。
 スポーツに対する私の考えですけど、機動隊ですから火炎瓶や石などが飛んでくる厳しい現場へ行きました。そこで一番頼りになる部隊というのは柔道、剣道をしている小隊でした。柔道、剣道をしている隊員は体力がある。精神力がある。学園紛争の時代、厳しい警備現場にて、「ここまで行け」「行ったら止まれ」「絶対に下がるな」と命令しても、それを完全に守ってくれるのが柔道、剣道の隊員でした。学生がなぐり掛かってきても、じっと耐えていました。体力があるけれども、スポーツで鍛えるのは精神力、忍耐力だと思います。そしてそれが一生役に立つと思います。スポーツとは楽しいもの、遊びという部分もありますが、自分の力を最大限に発揮できるところまで鍛える、心も鍛える、そして、それを一生守り続けるというのが私のスポーツへの感覚であります。
 最近の新聞の記事に体育会の不祥事が掲載されていましたが、学生スポーツに対する期待が大きいだけに、問題が起きれば社会的反応が大きい。某大学の強盗事件。どうして強盗まで走ってしまったのか。遊ぶ金が欲しかったようです。遊びとは自分の収入の範囲内でしなければいけないのですが、遊びは面白い面があり、ついついツケで遊んでみたり、サラ金で金を借りてみたり、最後には金がなくなり、町を歩いている老人から金をひったくろうかと、強盗をしようかとになってしまう。また、アメリカの一部の野球選手でも、薬物使用事案があったが、薬物には絶対に手を出してはいけません。1回でもやると「地獄」、「命取り」。どんなに意志の強い人でもまたやりたくなる。最終的には廃人同様になってしまうか、幻覚幻想にとらわれて犯罪に走ってしまう。結果的には自分が破滅する。絶対にやらないでほしい。
 どうしたらそういう事を起こさないですむのでしょうか。行政ではいろんな事案が起きると本省から通達が出される。通達が出たらそのとおりの事が現場で行われていると思うとそうではない。徹底して現場で行われるには、ある程度期間が必要なのですね。私が警察署長をしていて全署員を集めて話をしても、徹底できないことがありました。何度も、耳にたこができるくらい言っても徹底できない。徹底するためには、現場に行って実際に行われているかを確認する。これが大事なのですね。
 ある人が失敗すると、友人とか近隣の人が「あの人はそうゆうところがあった」と言うことが多いですが、回りが気がついた時それをどうするかが問題なんです。早い段階で問題を把握して、小さいうちに対応すればいいのですから。例えば何人かが集まって悪いことをしようと企む。自分はやめておけばと思っているのに、言うことができない。そういう時はそれはダメだと言う勇気が必要です。一時的には仲間はずれにされるかもしれないけれど、本当の友達であるのならば問題がある時に隠してしまうのではなく、ちゃんと先輩や上司に相談をして、解決してあげるというのが友達だと思います。
 では問題の把握の仕方ですが、必ず「兆」があります。例えばクラブ活動を無断でさぼる、理由を付けて早く帰る、服装が派手になる、金遣いが荒い、今までと変わったところが出ます。その人が失敗をする兆候なのですよね。だからお互いがそうならないように、気を付けてあげて、お互いに強くなろうじゃないか、一緒に練習をしようじゃないかと頑張っていただければ、自分も成長するし、そのクラブも強くなるし、また、失敗もなくなると思います。

森田 恒雄

 テレビを見れば人を侮るとか人を陥れるとか人をからかうとか 、そういうものがどんどん入ってきます。そういう中で育ち過ごしていると、人権感覚は麻痺してしまいます。そういうところにコンプライアンス、法令遵守が甘くなってくると考えられます。皆さんが学生スポーツとして高い志と情熱と使命感と行動力を持って選んだ大学が立命館大学なのです。スポーツ選抜入試で入学した学生も多くいらっしゃると思いますが、学業もしっかりして期間内に卒業してほしいと思います。それもコンプライアンスに続いていくのではないかと思います。
 113年ぶりという猛暑が続きましたが、この暑い中で皆さんは汗を流し練習・稽古に励んできたと思います。その成果がこの秋の大会の中で出てくると思います。決してそこで流した汗は無駄ではないと思います。こんなことなぜしなければならないのかと思ったり、不平不満を感じたり、もうやめようかと思ったこともあっただろうと思います。ここ一番もっと辛抱してもっともっと汗を流したなら自分の目標に到達できるんです。楽をして何もせずして人よりも勝ちたい人よりも上に行きたいということは、虫のいい話です。人よりも数倍苦しい体験を積んで、人よりも上の成績を上げられるわけです。  
 私は市教育委員会の嘱託で教職員の研修を担当していますが、教職員の不祥事というものは、研修をしてもあるものなのです。いろんなことをしても不祥事は後を絶たない。「体罰」ということがありますが、一方ではこういう熱血先生も必要なのだという人もいれば、こんな暴力教師は早く辞めさせろという人もいます。法律では体罰は禁止されているわけですからいけないことなのです。
 皆さんはまだ新入生なので、未成年は飲酒、喫煙はしてはいけないのですが、毎年4月頃に新入生歓迎パーティーなどがあり、そういうことが問題となっています。どうしてもアルコールが入ると気が大きくなってしまう。日頃言わないことを言ったり、しないことをしたりする。 そんな中でセクハラが起きたりしてしまいます。
 いま苦しい練習・稽古をしている中で、楽しいことよりも苦しいことの方が多いと思います。ましてや1、2回生はしんどいことをやらなくてはならない。皆さんが3、4回生になれば同じ事を後輩に強いることもあると思います。その中で法律に触れる、規約に触れるというようなこと、今自分がしてはいけないと思うことは、先輩になってもしてはいけません。後輩の時にしないと肝に銘じていても先輩になったら同じ事をしている。そういうことが年々続きそれが伝統になっている。しかし伝統と伝承とは違うのです。ありのままを伝えているだけでは伝承なのです。伝統とは残すものは残すのだけれど、新しいことも取り入れてやってゆくのが伝統と思います。是非先輩になった時伝えないほうがよいということはやめて下さい。でないといつまでたってもこれが伝統となってしまいます。
  私はいろんな研修をしますが、研修の中で人権の話をしています。人権とはいかに自分が努力しても、一生懸命頑張ってもどうすることもできないことで、不当な扱いと受けることが人権問題なのです。具体的に言えば女性差別というのが現実的にあるのですが、女性は努力しても男性になれないのです。そういう人権意識、人権感覚をしっかり持つことがコンプライアンスを守るということなのです。
 たとえば見てきたような嘘をつくということは社会の中でよくあります。また、あたかも自分がしてきたような嘘をつくこともあります。「俺の高校の時はああだった」とか、何にも意味がないことです。現実に立命館大学の体育会のクラブならばそこで頑張って欲しい。高校の成績などは関係ありません。今が大切なのです。しかもそういう中で嘘があってはいけません。練習・稽古が嫌だと逃げ回っていた者が「稽古をしなければならない」と言っても説得力がありません。
 そういう人権感覚が自分の人格を形成しています。本当に厳しい、本当に正しいということを身につけて行かなければ、ついつい社会のおもしろおかしい、からかいの文化というものに迎合してしまうというがよくあるのです。

討論会
                (敬称略)
 コーディネーター   村岡    治  立命館スポーツフェロー会長
 パネリスト    國廣  敏文  学校法人立命館常務理事
                     立命館大学スポーツ強化センター長
           内田  憲幸  元京都府警察官 警察庁警視長
                     京都簡易裁判所司法委員
           森田  恒雄  立命館スポーツフェロー副会長
           岸本    拓  立命館大学体育会 硬式野球部 2回生
           佐藤    南  立命館大学体育会 スケート部  2回生   


はじめに
村岡 治 
 立命館スポーツフェローの主旨は、大学当局と一体となって、学生により近づき物心両面にわたって支援することである。この中で本日の講演会も3回目となった。皆さんも卒業すれば我々の仲間になる。理解を深めていただきたい。

パネリストから
國廣 敏文
 みんなで考え、自由に相談できる、先輩にも自由に話せる雰囲気を作ってほしい。
一人だけに任せず、チーム全体でチェックすることが重要である。

内田 憲幸
 スポーツをしていてよかったと思えるようになってほしい。立命館には素晴らしい先生がいらっしゃる。頑張ればできる。

森田 恒雄
 「好き」ということより、「愛」です。愛があればどんな状況でもやれる。立命館を愛する気持ちが不祥事を防ぐのです。

岸本 拓
 立命館大学体育会の一員であることの自覚が一番大事だと感じました。一人の行為がチームや立命館の評価を下げることになります。リーグ戦や立同戦はいろんな人の支援により成り立っています。このことに感謝の気持ちを持ち続けることで自覚が大きくなると思います。一つ一つの行動に責任を持てば、体育会、チームの発展が望めると思います。

佐藤 南
 ルールを守ることはあたりまえで、大学生だからと許されることはありません。チームが悪いと思われないように、上級生はきっちりと指導し、後輩のことをいろいろ考えてあげるべきです。例えば練習に遅刻してきた後輩がいても、単に怒るのではなく、気遣いも必要と思います。

終わりに
村岡 治
 それぞれの立場で、この講演会、討論会が将来にプラスになるように考えてほしい。言い訳をせずに自分の努力でやるのみです。試合で負けてもそれを経験として、またやるのみです。社会人になっても同じことです。



懇親会                (敬称略)
 司   会  矢野  良祐  立命館大学体育会 準硬式野球部 4回生
 乾   杯  片田  賢史  立命館大学学生部スポーツ強化センター課長
 閉会挨拶  田渕  實勝  立命館スポーツフェロー幹事長   
 
乾  杯                         閉会挨拶
 

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